「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」のお勧め

しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~ Webマーケティング

フリーになる前はインターネットでの販促コンサルティングの会社に長いこと勤務していた。
その業務の中で、インターネットの誹謗中傷に関してはかなり多く関わってきたのである。
クライアントから「誹謗中傷がひどいので人材の採用で困っている」とか「売上が減っている」とか「入塾者が減ってる」といった相談を受けたりしていたわけである。

それに対してSEOといった技術論で対処できる場合は技術論で対処したり、法的対処が必要な場合は、クライアントに対して手続きの方法を細かく説明したり、申請書面の書き方についてアドバイスしたりしてきた。
場合によっては企業の顧問弁護士から相談を受け、弁護士に手続きを教えたりとかして、解決したという例も何件かある。

インターネットの誹謗中傷といった問題に詳しい弁護士はほとんどいないのが現実である。
そこでこの「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」を紹介したいのである。

このマンガの監修をしている清水陽平弁護士は、インターネットの誹謗中傷を数多く手掛けこの業界(?)では知らない人がいないほど有名な弁護士である。

昔の2ちゃんねる(現5ちゃんねる)は、書き込みの削除申請をするにあたって、裁判所からの削除の仮処分命令をもらい、その書面を2ちゃんねる上に掲示し、更に削除申請を行う申請者を明示しなければならなかった。
そのときの申請者の名前として頻出していたのが清水弁護士だったのである。長年インターネットの誹謗中傷に取り組んでいる大ベテランなのだ。

その清水弁護士が正確を期して一字一句までこだわって監修したのがこのマンガ。
家庭の主婦が事実無根の、憤りの気持ちから法的対処を行うことになったというストーリーです。

実際に私としても原告側として訴訟の当事者になったこともあるのでよく分かる。

「金がかかり、時間がかかり、精神が削られる しんどいんですよ」

まさしくその通りなのである。
インターネットで誹謗中傷を行った人に対しての法的対処はとにかく時間がかかる。

刑事訴訟に訴えたいところではあったのだが、名誉毀損といった案件は警察は面倒なので門前払いになる。
まずは殺人とか傷害といった身体に関する案件が最優先、その次に窃盗といった財産に関する案件、名誉といったものは最後の最後になる。警察も忙しいので弁護士から告訴状を提出してもらっても受理してくれないのである。

仕方ないので民事訴訟をするのだが、誰がその誹謗中傷の行為を行ったかを特定しないと民事では訴えることができない。
そのためにはIPアドレスの開示のための仮処分を勝ち取る必要があるのだが、これが裁判と同じぐらいの時間がかかる。
また、IPアドレスがわかってもそこから個人を特定するためにはプロバイダーに対して、発信者開示請求訴訟を起こして、勝訴して個人情報を得なくてはならない。ここまでやって初めて個人を特定して、リアルの民事訴訟と同じ土俵に乗ることができる。

ここまで1年以上かかるし、大体費用も50万円ぐらいはかかる。
私が経験したケースではIPアドレス開示のための仮処分をめぐる裁判では、先方のヤフー株式会社は弁護士5人を擁する弁護団で全面的に争ってきた。
10ヶ月ほどかかったものの仮処分命令を得ることができて、その後はエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社に対して発信者開示請求訴訟。
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社の弁護士は1名でそれほど真面目に争うつもりはなく、これはわりとすんなりいったもののやっぱり半年近くはかかったわけである。

とにかくこんなに時間もかかるし、費用もかかる。

その後、民事訴訟で損害賠償請求をするのだが、弁護士費用が30万円ぐらいはかかるし、またまた期間がかかるのである。今回の件については3年ぐらいかかっており、その間に100万円ぐらいの費用が発生している。

また、先方の弁護士からの答弁書を読むと、あまりの身勝手でデタラメな内容に腹が立つやら、むかつくやら、はらわたが煮えくり返るやら・・・。という感じである。

ここまで金銭的・期間・精神的負担があるのに法的対処をやるのか?そして勝ったとしてもスッキリという気分にはとてもなれない、というリアルがこのマンガには表現されている。
インターネットの誹謗中傷という問題に興味のある方には是非読んでもらいたい一冊である。

私として正面から訴訟という形でぶつかっていくよりも、できることならば訴訟は避けたほうが賢明だと思う次第。
技術的対処でなんとかなるなら金額にもよりけりだが技術的対処でなんとかしたり、ネット上で様々な調査を行って犯人をある程度特定したりするほうがよいと思う次第。

ネット関係の訴訟に詳しい某弁護士と一緒に協業してこの手のビジネスを始めようかと考えている今日このごろである。

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