ある昼前11時頃、壽司屋は会社の事務所に突然やってきた。

歳の頃は50歳代ぐらいか。

「えーと、すいません。あのさあ、娘がさあ出前の注文間違えちゃって、2人前のところを20人前って聞き間違えちゃって。このままだと腐っちゃうから、半額の500円でいいから買ってくれないかなあ」

おお、そりゃあ、たいへん、一大事だ。よりによって20人前だもんな。

自分は壽司だったら2人前は軽く食べられるので(必要がなければそんなに食べない。要は財布とのかね合いである)2人前を注文する。
壽司桶が出てくるかと思いきや、竹の皮の模様を印刷した紙に包まれている。

私だけではなく、事務所で他5人ほどが注文した。基本的にお人よしどもなのである。

壽司屋は、

「あーーどうもありがとう」

といって疾風のように去っていった。
自分は壽司屋が去って程なくして紙の包みを改めて手に取る。
妙にずしっと重いのである。
包みを開けてみる。

なんじゃこりゃーーーー

全部海苔巻きである。
しかも、かっぱ巻、かんぴょう巻、鉄火巻の三色。
しかも、しかも、鉄火巻のマグロの色の悪いことときたら。食ったら当たりそうな勢いである。

「やられたよ」

その瞬間すべて悟った次第。
1人前48巻ありそれを2人前、全部食ったのである。
もう吐き気がしそうである。

しかし、すべては後になると納得である。
お昼前の11時に現れるのがまずみそだ。
この時間だったらすぐに包みを開ける人はまずいないので、中身を見る人はいない。
包みが紙というのがまた仕掛けで、桶を回収する必要がない。
娘が間違っちゃったっていうのが、また絶妙である。
今思えばあまりにもべたな手口にやられたのだが、まあ、腹を壊さなかったのでよしとすることにしたのである。

で、後で調べてみたところこんな手口はあるようなのだ。

犯罪者インタビュー:「スシスシ詐欺」の男

ガジェット通信にあった記事のまさしくそのまんまである。
詐欺師歴35年というEさんのぼやかした写真が掲載されているが(この写真をお借りしました)まさしくこんな感じだった。同一人物なんじゃね?と思ったのである。