私はSEOという仕事をしているのだが、SEOに限らずWebマーケティングはそれ以前に勝負が半分終わっていることが普通である。
というのも、1人の顧客から得られる収益が違うことが重要な差なのである。
一見同じように見える商品であっても、利益率が違ったり、購入回数に差があるとその商品の収益はまったく異なる。
非常にわかり易い例が健康食品である。
テレビCMや新聞広告といったPRに多額の費用をつぎ込んだり、初回お試しは無料で送るといったPR経費をかけてもちゃんと儲かるようになっている。
初回は無料だけど、その後は買ってもらうようにうまく誘導する仕組みがあったり、何度も購入してもらうような仕掛けが施されている。
1人の顧客が平均して、1・2回しか買わないなら、PRに費用を掛けることはほとんどできない。
しかし、平均して30回買ってもらうことが期待できるなら、初回無料にするぐらいは何の問題もないわけである。
健康食品は非常にわかりやすい例なのだが、1人の顧客から得られる売上がまったく違うことはよくある。
もう一つ、有名な例を1つ挙げてみる。
ひげ剃りメーカーのジレット社は、替刃を定期的に購入してもらうことで、1人の顧客から定期的に売上を得る戦略を考えた。
最初に販売するときの価格を安くする。しかし、替刃の取り付け部分の形状が特殊な形になっていて、ジレット以外の替刃はつけられないようにしたわけである。
これが大当たりし最初に安く、あるいは無料する代わりに、定期的に利益が得られるビジネスモデルを「ジレットモデル」というようになったのだ。
圧倒的に顧客から得られる売上が違うことがわかるだろう。
さて、ようやくWebマーケティングの話になってくる。
1人の顧客から得られる売上額が1,000円と10,000円であれば、選択肢が大きく違ってくる。
リスティング広告でまずは考えてみよう。
前者であれば、普通の検索連動広告で効果の高いキーワードだけに絞り込んだり、ディスプレイ広告であればリマーケティングといった、成約率は高いものの集客力が低い方法が選択肢になってくるだろう。
後者は様々な方法を取ることができる。将来的に顧客になり得る層に広くディスプレイ広告を出したり、Youtube広告やネイティブアドといった準備にお金がかかる方法も使える。
SEOであれば、前者はあまりコンテンツ制作に費用や手間を掛けることができない。それに対して後者であればその道で有名な著者をライターとして起用したり、社内で詳しい人員を抜擢しライティングに専念させるといったこともできる。
また、CGMといった自然に書き込みが集まる仕組みの構築といった、大がかりな方法も可能になってくるだろう。
売上が違うと選択肢の幅がまったく異なってくる。
また、大体において費用対効果が良い方法というものは、絞り込んだユーザーに対してだけアプローチをする方法なので、圧倒的な数を売ることは難しい。
テレビCMや新聞広告といったターゲット以外にも多く届いてしまう手法はこの逆で、費用対効果はよくない可能性が高いが、圧倒的な数を売ることが可能である。
ということで、売上額を高く取れる仕組みを作ることによって、アプローチできる顧客の広さが圧倒的に変わってくるため、ますます差が開くわけである。
1個2,000円で利益額1,000円の商品について、1人の顧客が1個しか買わないケースと、10個買うケースを比較してみよう。
1個しか買わないケース
PR費用 | ¥1,000,000 |
顧客獲得数 | 1,500 |
顧客獲得単価 | ¥667 |
売上 | ¥3,000,000 |
粗利益額 | ¥1,500,000 |
PR費用を差し引いた最終利益 | ¥500,000 |
10個買うケース
PR費用 | ¥100,000,000 |
顧客獲得数 | 30,000 |
顧客獲得単価 | ¥3,333 |
売上 | ¥600,000,000 |
粗利益額 | ¥300,000,000 |
PR費用を差し引いた最終利益 | ¥200,000,000 |
10個買うケースでは販促費を多くかける事ができる。
その結果、顧客獲得単価が5倍ぐらい高くなっているが、それでも利益は400倍も違うし、最終的な利益率も高くなっている。
というわけでまったく勝負の土俵が違うのである。
1人の顧客が一生の間でどれだけの利益をもたらしてくれるか?を金額で換算した数値をLTV(Life Time Value/顧客生涯価値)というが、LTVの高低は小手先のWebマーケティングのテクニックでは覆せないのである。
競合に対してLTVが劣っていれば、SEOのコンサルタントとしては少しでもその差を縮めるようにアドバイスをすることが最も重要な仕事となる。
SEOはSEOの技術論で解決できない課題が多いのだが、これはその最たるもので、このあたりでいかに知恵を出すかが重要だと私は考えている次第である。
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