高エネルギー加速器研究機構を見物してきた

高エネルギー加速器研究機構の航空写真 見聞録つまりエッセイ

※この記事は2008年9月に公開したものを2019年に一部加筆修正しています。

子供たちにとっては夏休みの最終日にあたる8月31日に、つくば市にある高エネルギー加速器研究機構を見物に行ったのだ。
実は、今年の春にここでサイエンスカフェというイベントがあって、行ったことがあるので2回目である。
サイエンスカフェというイベントは、お菓子やお茶を飲みながら、科学にかんする話題をボランティアの講師が講義してくれたり、講義形式でディスカッションしたりする。講師も菓子を食べながら話をするという風変わりなイベントであった。その日はたまたま会場が高エネルギー加速器研究機構であったというだけだったので、残念ながら加速器は見せてくれなかった。

職員の人に聞いたら、

「毎年夏か秋に一般開放をするので来て下さいね。ホームページとかで日程はお伝えするので、それでみればいずれ分かると思います。」

とのことで、ずーっと楽しみにしていたのである。
加速器というのは何かというと、簡単に言ってしまうと、大きなドーナッツ状の筒であり、その中を電子を超高速で回転させて種々の実験をする装置だ。巨大な装置であればあるほど、光速近くまで加速することができる。

つくばの加速器は世界最大級。
Google Mapによる航空写真

高エネルギー加速器研究機構の航空写真

見ただけで巨大さが分かるというものである。
円周約3km、加速するために必要な電力はなんと年間で民間家庭11万戸に相当するという。とてつもない装置である。

それがじゃあ、なんだ?と言ったときになかなか微妙なのだが、物質とは何か?という根本を調べることに使ったりする。高速な速度を持った粒子同士を衝突させるとばらばらにぶっ壊れる。
ぶっ壊れることを観察することによって、物質が何から成り立っているかということを調べたりするのだ。

ちなみに今年稼動予定のスイスのCERNは、円周27kmという巨大なものだ。
これが稼動すると、さまざまな常識を覆すような知見が得られる可能性が大いにある。

物理的な力は電磁力、強い相互作用、弱い相互作用、重力の4つに分けられる。
重力以外の3つの力についてはその力を及ぼす粒子が見つかっているが、重力については未だに粒子であるということが仮説にとどまっている。それがCERNの完成により観測できるのではないかと期待されている。
もし、重力も粒子であるならば、おそらくこの世界の空間は4次元以上であるということの証明になりそうなのだ。縦・横・高さのほかの別の次元があるということになる。
また、このレベルまで加速を行うと、地上に人工のブラックホールを作ってみることができそうということらしい。まあ、こんな極微小のブラックホールはできた瞬間に蒸発してしまうのでなんら危険性はない(ちなみに天体のブラックホールも時間の差こそあれ、いずれは蒸発して消滅する)。

ああ、脱線した。

高エネルギー加速器研究機構に行ってきたのだった。
駐車場が臨時駐車場とか用意されていたが、それもむちゃくちゃ込んでいる。何人も職員の方が誘導している。こんな大きなイベントとは思わなかった。
前日までの未曾有の降水量を記録した豪雨のために、ぬかるみまくっていた。それでも人いっぱい。
ほとんどの施設を見せてくれたり、科学の実験体験をやったりするという超大規模なイベントだった。
機構の敷地内が全てイベント会場。

こんなに大きいところとは思わなかった。考えてみれば直径1kmの円周があるほどの施設なのだ。大きいはずである。でもそれにしてもすごかった。加速器だけではなくて、さまざまな施設があった。

駐車場の真ん前は体育館とテニスコート。こんな施設まであるんだってびっくり。体育館の中では、紙飛行機の製作のイベントをやっていたらしい。

構内を貸切のバスがたくさん走っている。確かにそんなものがないと移動できない広さだ。
駐車場には3台もバスが止まっていた。

絶え間なくバスが発車するが、それでも満員。大変な大賑わいである。

これだけの研究施設なので、研究に必要な機材を作るセンターまである。

74台の工作機械を擁する機械工学センターなんていう施設がそれだ。巨大な旋盤がごろごろ。何の工場ですか?っていう感じ。
機械工学センターではマイスナー効果の実験とかをして子供たちを遊ばせていた。液体窒素に浸した円盤を、ジェットコースターみたいなコースが組まれているレールに乗せると超高速で滑っていく。浮いているから早い。まあちょっとしたリニアモーターカーの実験だな。

とか、まあ、施設の中ではそんないろいろな実験をしていた。

さて、加速器。

建物も巨大。エレベータを降りたあとにはこんな空間もある。
5階建てぐらいの高さの巨大な吹き抜け。なんだか、一世を風靡したかのゲーム「バイオハザード」の舞台になっている、アンブレラの研究所のようだ。本当にまさしく雰囲気的にあんな感じ。

加速器そのものはこうだ。
一部分だけを開放しているのだが、本当にでかい。本当に長い。こんな円周3kmの中を1秒間に電子が数十万周するそうである。想像するだけでなんだかわくわくする。

ここは加速器だけではなく他にも大掛かりな実験をやっている。
ここで、ニュートリノという粒子を作り、岐阜県の神岡まで地中を進ませて供給するなんてこともしていた。岐阜の神岡にはスーパーカミオカンデというニュートリノを観測する
巨大な施設があって、ここと連動して研究を行っていたわけだ。ニュートリノという粒子は、たとえ星があったとしても普通に突き抜けてしまうので、地中からすすませても弱まったりしないということはわかるのであるが、実に遠大な実験だなあと感心したものだ。

職員食堂も開放されていて定食を食べた。おしゃれな感じであったが、まあ、味はふつーって感じ。まあ、職員の食堂って感じでしたな。

中にセブンイレブンまであるってすごい施設である。

この日は、スタンプラリーをやっていて、10箇所回ったら景品がもらえるということで、回りまくった。
本当はもっと職員の方から話を聞いたりしたいのだが、時間がない。もっと朝早く出てくればよかったと反省。職員の方々も気楽に質問に答えてくれて、とってもいい感じだった。

これが景品。結構気に入った。
かなり経費はかかっているが、おそらくこのようなイベントを見た子供たちは、科学への興味を育んで次代の日本を担っていく人間に育っていくに違いない。これは無駄ではないと思う次第である。

加速器のような、このようなプロジェクトそのものは即座に何がしかの工学分野への応用があるわけではないので、やはり政府主導で行うしかない。こういうものは財政危機であっても存続させて欲しいと思うわけだ(もっとも、当機構が統廃合されるという話はないが)。

コメント

  1. ani*ond*d より:

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    高エネ研に行かれたんですね。
    ボクも今から10年以上前に2回ほど妻と一緒に一般公開に行ってきました。あれものすごい施設ですよね。
    加速器に行く途中にあった巨大な変圧器が昔のSFみたいで印象に残っています。

  2. kiyory より:

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    この施設、TVの何かの番組で見たことがあります。
    こういう研究施設って本当にあるんですね。
    よくわからないけど、世の中にはとてつもない研究をしている人たちが実際にいるんだなあと、科学に疎い私は、まるでSFの世界のように思えます。

  3. tamuuuuu より:

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    たなかじゅん様>行かれたんですね。あそこは面白いですよね。
    確かに変圧器ありましたね。あの中のコイルにまいてある電線を延ばすと何メートルあるのやら・・・。
    本当にSFの世界って言うか、門外漢から見るとただ一言すごいという言葉につきますです。

  4. tamuuuuu より:

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    Kiyoryさま>とてつもない研究という言葉がまさにぴったりで、こういう世界に身をおいている人に対して本当に自分は敬意というか、なんだかすごい人だということを思います。自分は、この分野の研究の記事とか見るのがすきですが、分かろうとすればするほどすげーなーって思いますもの。
    SFみたいというのはまさにその通りだと思います。SFの世界はすでに現実になっているのですねえ。

  5. hnw*y*05 より:

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    お久さしぶりです。下村さんのGFPは理解できますが
    益川さんのはこれが(高加速器があって)はじめて発見できた
    までしか理解できませんね!田村さんの解説までですね!(笑)
    伊藤 清も

  6. tamuuuuu より:

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    お久しぶりでございます。お元気そうで何よりです。
    こういったものはまあ、わからないのですが、そんなものに対しても税金を支出するというその気持ちは失ってはいけないと思ったりします。

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