連載短編小説「カニのオマージュ」

掌編小説「カニのオマージュ」第8話

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私はボンネットに飛び乗ろうとしてジャンプした。
しかし、いかんせん運動不足の中年男性の体力である。

なんとか、轢死だけは免れたものの、ボンネットに腹ばいになってかろうじて難を逃れただけである。

左に大きく転回し振り落とそうとする。

落ちるっ。

そう思った次の刹那に、

「ガジャーン」

大きな音がして、車はいきなり止まった。
急な停止のために、私はフロントガラス、天井を転がり車の後ろに落下した。
アスファルトに叩きつけられた衝撃の激しい痛みで、立ち上がることができない。
でも、逃げなければ。

這って少しでも逃れようとする。
動けない。

でも、車は動こうとしない。

痛みに堪えて車につかまりながら立ち上がり車内を見る。
運転席側の窓ガラスが割れていた。車内の男は泡を吹いて悶絶している。
シートの足元を見ると大きな石が転がっていた。
誰かが私を助けてくれたのだ。彼女か?
そうだとしか考えられない。私を失うことは金づるを失うことだし、ここで私が事故死したということになれば、捜査の手が及ぶのは必至である。
私は周囲を見回して彼女の姿を探す。

しかし、いないぞ。

仕方がない。彼女が出てくるのを待つか。
車をそのままにして、玄関が見えるところで待つ。
そこで、私は見知った男が玄関に近づいてくるのを見た。
スーツ姿のその男には確かに見覚えがあった。
部長である。部長が助けてくれたのか?
ならば、何故部長がここにいるのだろうか。

・・・わかったぞ。そういうことか。

※画像はこちらからお借りしました

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