もう誇張じゃなくて本当に大変だったのだ。
朝、会社に出勤途中、何か腹が痛かったのである。

でも僕は僕は腹痛持ちだったのでそんなに気にしていなかった。臍の下あたりが痛くなることがよくあったのである。
ちょうどいつも飲んでいる、中外胃腸薬を切らしていたので薬局に寄ってそれとエビアンを買い、自席に座って飲んだ。

なかなか痛みがおさまらず、机にしばらく臥していたのだが、逆に痛みは徐々に強くなってくる。

「ぐうううううう、いてえええええええ、はらわたがよじれるようだ」

って、いうわけであきらめて病院に行くことにした。
といっても、その近くのどこに病院があるかも知らない。
元、漫画家のアシスタントをしていた(関係ないか)K女史に案内をしてもらう。

病院はすぐ近くであった。徒歩2分。駅から会社に来る途中である。毎日通りかかっていたのに全く知らなかったというわけであった。
薄暗い病院であった。
受付をしようと思うのだが、意識が痛みにしか向いていないのでまともに会話することすらおぼつかない。K女史が初診の受付を済ましてくれて、彼女は先に仕事に帰った。

それにしてもなかなか診察が回ってこない。
もう、その場で腹を押さえて、エビのように痙攣しながら待っているのに。少しは早くやっておくれよ。
痛みに耐え兼ねて、呼吸も絶え絶え。くうううう、死ぬって思った。

1時間ほど待っただろうか、やっと診察の番が回ってきた。
聴診器をあて、ひとしきり診察した医師は、

胃炎ですね。とりあえず胃炎の薬を1週間出して置きますから、それのみ終わってからまた来てください」

と言った。

それからさらに30分ほど待って薬が出て、とりあえず飲もうと思ったのだが、もう缶に入っている液体飲料を買いに外に出る気力もない。
受付をしたのが遅い時間だったので、もう診察室の電気が消されて、受付も終了した。ああ、無情である。

そんな時、総務のM女史が待合室にやってきた。
「えええっ!そんなに痛いの?。今日早退します?」
「はい。うううううううっっ・・・・・・」

M女史は受付に、
「こんなに痛がってるですけど、何とかなんないですか?」と言ってくれた。
するとちょっとして、診察室の電気が灯り、中に呼ばれた。僕はM女史にむちゃくちゃ感謝した。

「とりあえず痛み止めの注射をしましょう」
といって、大きな注射を取り出した。
ああ、もう痛みが止まるなら何でもいい。さあ、さっさとやってくれ!

「これで、しばらく様子を見ましょう」

って言われて、しばらく悶えていたのだが、全然痛みが引かないのである。
まさに悶絶寸前である。

「あのね、救急車でね、順天堂医大に行くことになったからね。もうちょっとしたら来るから待っててね」

M女史はそんな私におっしゃった。ああ、あなたは私の女神様。

しばらくして、救急隊員が迎えに来た。
「救急車まで歩けますか?」

歩きたくねえーーーー。って感じ。でも渾身の力を振り絞って歩く。救急隊員なら担架で欲しい、と心の底から思うのであった。
でも何とか救急車までたどり着き、一路順天堂へ。まあ、たった一駅の距離なのですぐについたのだが、その時間たるやもう無限にかかったような気すらする。この時で自分は救急車に乗るのは2回目であるが、やはり中はどうなっていたか覚えていない。実に残念である。

それで、ここで診察を受けたのだが、また服を脱いだり着たりとまあそれは良いのだが、レントゲンを撮ったりは辛過ぎです。立ったまま息を止めてくださいとかって、「出来るかそんなこと!!」って感じである

それから、生まれて初めてCTスキャンなる機械を体験した。
もう、検査ばかりで時間がかかるかかる。
おまけに触診もあって、
「ここ触ると痛いですか?」
「ゐてててててーーーー」
痛いんだっちゅーの。もうどこ触っても激痛である。

検査はすべてで1時間以上を要した。
診察室から出てくると、M女史と妻がいたので驚いた。
M女史が妻を呼んでくれたのである。うーん、なんてすばらしいのでしょう。

また、診察室に呼ばれて医者と話をした。

「田村さん。これは盲腸です」
「そうなんですか」

なるほど痛いわけである。

「今すぐ手術をしないといけないんですが、残念ながらベッドの空きがありません。というわけで、今から病院を移っていただきたいのですが・・・。東京警察病院に手続きをとっておきました。こちらで、診察は一度しているのですが、あちらでまた診察があると思います。その辺は仕方がないので、すいません。」

はい?って感じである。だったら、診察する前に言ってよ!というか、だったら最初から他の病院に回せよ!こっちはこんなに悶絶せんほどになってるのに。

また妻と一緒に救急車に乗って、一路東京警察病院へ。
警察病院って、一般の人も診てくれるって知らなかったなあ。それはともかく痛い。死ぬほど痛いんだよおおおお。
んで、こちらについてからまた全く同じ診察を行うのである。

また、触診があって、聴診器があって、レントゲンがあって、CTスキャンがあって、エコーを撮って、やりすぎだっちゅーの。

「田村さん、前の病院で盲腸という診断でしたが・・・」
「・・・」
「やはり盲腸でした。今すぐ手術しましょう。」

初めて病院にいったのは朝10時、病院をたらい回しにされ、無意味な診察を受けた結果、もう既に3時になっている。何ということでしょう。という感じだ。

手術は初めてだったが、全く怖いという感想はなかった。この痛みから開放されるならもう何でもしてくれ!である。
そこからは割と早かった。30分後にはもう麻酔の注射を打つという段になっていた。

「田村さん。今日は豪華ですよ。麻酔科医が3人もつきますよ」

うーむ、確かに豪勢やなあ。小さい病院なら、麻酔科医が一人もいないこともざらなのに、たかだか盲腸の手術の為に3人も麻酔科医がつくなんて画期的にすごいことである。
喘息持ちであるというここで、どうやら呼吸の管理などが難しいかららしいのだが、それにしてもすごいね。

麻酔の注射は脊椎に打つ。下手な医者だとうまく行かなくて何度もやりなおしたりしたり、最悪神経を傷つけてしまって体が不自由になってしまったりするらしいのだが、さすがに専門医(?)スムーズに行き、ひんやりした感触が背中に広がっただけで終わった。

「田村さん、眠くなったら寝てもいいですよ」
「はい」

確かにいい気持ちになってきて、入眠前のあの心地よい脱力感のようなものがやってきた。でも、せっかくだから起きていたいと思った。だって、体を切られている体験なんてめったに出来ないじゃん。そうそう、麻酔のために痛みもなくなっているし。

胸のあたりに布を掛けられているので見えないのが残念である。
麻酔というのはしみじみすごいもので、体を切り刻まれているのに全く痛くないってマジですごい。

手術は1時間足らずで終わった。

「田村さん、切り取った盲腸見ますか?」
「はい。」

目の前に、こてっちゃんのような3cmぐらいのモツを広げて医者は言った。

「これです。普通は盲腸って小指の先ぐらいの大きさなんですけど、こんなに大きくなってましたよ。それで、もう少し遅かったら危なかったですねえ。腹膜にもだいぶ炎症が広がってましたし・・・。それにしてもよくこんなになるまで我慢しましたねえ」
好きで我慢してたんじゃありませんてば!

追伸
出産された方で、盲腸の痛みを経験された方。どちらが痛いものか教えてください。一回白黒つけたい(なんのこっちゃ)