彼女のワンルームマンションの玄関前にやってきた。

インターホンを押す。
反応なし。

もう一度押す。
反応なし。

インターホンを連打する。
反応なし。

インターホンをひたすら連打する。
まったく反応なしである。

押しすぎたか?

玄関脇の窓からは明かりや物音は漏れていない。多分不在なのだろう。

一旦引き返し、最寄駅の近くにあった喫茶店にいって、置いてあったマンガをひたすら読みつつ時間をつぶす。
迷惑がられているのは明らかだったのだが、しかたがないのである。

暗くなってから再度訪問してみる。
明かりが漏れていない。
インターホンを押してもやはり誰も出てこない。
ひょっとして・・・。
嫌な予感がかすめる。
玄関近くにある電力メータを見る。全く回っていない。
もし、誰かが住んでいるのであれば、最低限冷蔵庫はあるので、メータは一日中回っているはずだ。
この部屋は今は空き部屋になっているということがわかったのだ。

ああ、逃げられた。

どこに行ったのだろうか?
手がかりは・・・、なしだ。
寮に帰って作戦を立てる。

興信所に頼むか。
でも、今の自分の財源では無理だ。

色々思案していたらふっと気がついた。
ひょっとしたら転居届けを出しているかも知れない。それに賭けてみよう。

今は昔だったらスパイ映画でもなければできなかったようなことが簡単にできるようになった。GPS機能内蔵の携帯電話を購入し、これを小包に入れて、彼女のワンルームに送るのである。
その携帯のありどころは、自分の携帯の画面で逐一追うことができる。

もし転居届けがなされていれば、携帯は彼女の家に着くはずだ。
携帯ショップで、GPS内臓の携帯を買う。
「子供を守る安心携帯」っていうキャッチコピーの製品である。まさかこんなことに使われるとは開発者も思ってみなかっただろう。

光の点は、郵便局をずっと指し示していたが、やがて動き出した。彼女のワンルームとは全く違う方面を目指して進んでいった。やったーーーー!私は快哉を叫んだ。
レンタカーに乗ってその光の行方を追う。
最終的に光の落ち着いた先は、元々彼女が住んでいた街と勤め先の会社をはさんで反対側の街だった。

私はついに小包を運ぶ赤いオートバイを見つけ出した。これをつけていけば彼女の家に着くのである。配達員は道路を千鳥状に行きつ戻りつしながら、どんどん配達をこなしてゆく。

ついに、私の小包が郵便配達員の手によってかごから取り出される様が見えた。

郵便局員がインターホンを押すと、彼女が出てきた。

「何これ。精密機器在中って書いてあるよ。かー君なんか買ったの?」
「ううん。何だろう?」

二人は巨大な首をかしげていた。
踏み込もうと思ったが郵便局員がいるので今は都合が悪い。タイミングを待つのだ。なあに、待っていればいつかは必ず開くさ。

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